【萌える判例】ときめきメモリアル事件

美少女ゲーム「ときめきメモリアル」シリーズ

みなさんは美少女ゲーム「ときめきメモリアル」1現在までの美少女ゲームの雛形といえる存在であり、美少女ゲームの最大のヒット作である。シリーズをご存じだろうか。
簡単に説明すると3年間の学園生活の中で行動を逐次選択し、勉学・出来事・行事等を通して好感度やスペックを上げていき、お目当ての女の子から告白を受けることを目標としたゲームである。なぜ主人公が受け身なのかは触れてはならない。(作中でデートは一丁前に誘いまくる。)

事件の発端

ところがこの純愛的なゲームをめぐって裁判が起こり、裁判官を取り込んでお目当ての判決を受けることを目的としたクエストが発生した。

このゲームは女心を読み取って好感度のパラメータを上げなければ好かれることもなければ当然告白もされない。しかし、これこそが重大な火種となってしまった。

当時の美少女ゲームをするメイン客層である陰キャ達お客様方には、女心を理解して行動するという本作品のシステムは悪魔的な難度だったのかもしれない。それ故に憧れの美少女から告白を受けることが難しく、そんな需要に応えるように「すべての好感度等のパラメータが超高いデータが入ったメモリーカード」が非公式ながら輸入販売され、これによって非モテプレイヤーは現実のお金で憧れの美少女に振り向いてもらうことに成功した。実に虚しい課金である。しかし、この状況にコナミはメモリーカード輸入流通業者にときメモのストーリーを破壊されたとして裁判所に訴えた。

このメモリーカードのデータはいくつか用意されており、その中にはパラメータだけ上げて告白イベントのある卒業式の時点まで飛ばすというまさに合理性に特化したデータもあった。時空のゆがみによるストレス値の上昇は無いので、プレイヤーはおろか作中の主人公も良心の呵責というものはなさそうだ。

憧れの裁判官から告白を受けたのは…?

最高裁の判決は、以下の通りとなった。

「主文 本件上告を棄却する。上告費用は上告人の負担とする。理由 ・・・本件ゲームソフトの影像は,思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものとして,著作権法2条1項1号2著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。にいう著作物ということができるものである・・・・・・本件メモリーカードの使用は,本件ゲームソフトを改変し,被上告人の有する同一性保持権3第二十条 著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。を侵害するものと解するのが相当である。・・・・・・したがって,・・・本件ゲームソフトの改変のみを目的とする本件メモリーカードを輸入,販売し,他人の使用を意図して流通に置いた上告人は,他人の使用による本件ゲームソフトの同一性保持権の侵害を惹起したものとして,被上告人に対し,不法行為に基づく損害賠償責任を負うと解するのが相当である。所論の点に関する原審の判断は,結論において正当であり,原判決に所論の違法はない。論旨は採用することができない。よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。」として、大阪高裁の判断を支持した。

前提となっている大阪高裁の判決は「・・・被控訴人は、控訴人に対し、114万6000円及びこれに対する平成8年12月27日から完済まで年5分の割合による金員を支払え・・・」というものである。(同一性保持権及び複製権侵害による)

要約すると、「ときめきメモリアルの美少女たちは保護の対象なので、生みの親(コナミ)としては愛娘の性格を勝手に改変されたら嫌でしょうし、異常な改変データは認められません。メモリーカード業者はコナミさんに迷惑かけたんだから114万円支払ってね。無駄に最高裁使ったので上告費用も負担しろ。」という判決である。判決の日、コナミは裁判官に公正な法の下で支持された。4ときメモでは卒業式の日に伝説の樹の下で告白される。ときメモの美少女たちにも思想の自由、主人公を嫌う自由が認められたとも言えそうである。

また、大阪高裁では「もともと本件ゲームソフトの内容は、高校三年間プレイした結果、主人公の内面(ステイタス)と外面(女生徒とのつきあい)にそれなりの個性が刻印され、その刻印された個性に応じてエンディングが与えられるという仕組みになっている。従って、初期設定として、高校入学時における主人公の九つのパラメータの数値が体調100・文系40・理系40・芸術40・運動40・雑学32・容姿60・根性5・ストレス0と決められたことは、ゲームのスタートにおける主人公の状態は、特定の個性を帯びていてはならず、かつ、これからのプレイの仕方如何によってあらゆる方向の個性を発揮できる可能性を秘めたものであることを意味する。ところが、例えば、本件メモリーカードのブロック1によって、高校入学時における主人公の九つのパラメータの数値がストレス0以外全て999になったことは、九五年七月一〇日の最初の期末試験が、何一つ勉学を行わなくても一位となることから明らかなように、成績ひとつ取っても入学時から成績がずば抜けて優秀という設定を意味する。これが本件ゲーム制作者が苦労して決定した前述の主人公の個性の設定を無意味にするような重大な改変に該当するものであることはいうまでもない。」と示しており、どことなく語気が強い。なろう系にありがちな「またオレ何かやっちゃいました?」を故意に発生させることは、裁判官としては許せないようだ。裁判官たちは学生時代、苦労も無く彼女をつくり青春を謳歌するリア充を恨めしく思っていたのかもしれない。

今回の最高裁判決はゲームの「ストーリー」に同一性保持権を認める大変重要かつ画期的なものであった。しかしその前提となっている大阪高裁について、ぜひ判決文をみてほしい。憧れの美少女から告白を貰うためにはどうすればよいか、攻略サイト顔負けの詳しさで分析されている。いったい裁判所の空気はどのようなものだったのだろうか…。

*参考文献*
最高裁判決 https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail7?id=52268
大阪高裁判決 https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail7?id=13721

  • 1
    現在までの美少女ゲームの雛形といえる存在であり、美少女ゲームの最大のヒット作である。
  • 2
    著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
  • 3
    第二十条 著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。
  • 4
    ときメモでは卒業式の日に伝説の樹の下で告白される。
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>長島研究室

長島研究室

帝京大学長島光一研究室では、民事訴訟法を専門とし、医療分野・環境分野・情報分野の議論も実施しております。 ここ数年は、自分の好きなことを法と絡めて紹介する「趣味と法」・グループを作って行う「民事模擬裁判」を実施しております。

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